2018年11月11日日曜日

エドヴァルド・ムンク

「生命のダンス」

代表作の「叫び」はあまりにも有名だが、その他の作品からも感じられるように、抑圧された心の中にある恐怖や不安を表現している。その強烈な感情表現は、後の画家達にも大きな影響を与えたと言えるだろう。



 ムンクの周囲には「死と病」の影が絶えずつきまとっていた。その恐怖に怯えながら育った彼は、いつしか結核と精神衰弱の家系に生まれた自分は、独身を通した方が良いと考えていたようだ。
 自らの運命に怯える彼に、もうひとつの恐怖が加わった。それは、トゥッラという女性との関係だ。裕福な家庭に育ったトゥッラは、金にものを言わせ、ムンクを意のままに操ろうとした。ムンクは嫌気がさし彼女を避けるようになつた。しかし、トゥッラは執拗にムンクを追い回し、ストーカーにまでなった。
 ある日、ツゥッラは自殺をほのめかしピストルを手に取る。止めようとしたムンクとツゥッラはもみ合いになり、暴発したピストルでムンクは中指を失うことになる。

「ムンクとツゥッラ」
 「生命のダンス」はツゥッラと交際中の作品で、ムンクに恐怖を植え付けたのと同時に、制作活動にインスピレーションを与えたと言ってもいい。
 作品中央は、ムンクと昔の恋人、左の女性はツゥッラ、右の女性も年老いたツゥッラだと言われている。やがて起きる二人の悲劇を予期した作品だ…。

 ちなみに、赤い女性は「情熱」を、左のツゥッラは「無垢」を、右のツゥッラは「内なる影」を暗示しているそうだ。