2018年11月11日日曜日

エドヴァルド・ムンク

「生命のダンス」

代表作の「叫び」はあまりにも有名だが、その他の作品からも感じられるように、抑圧された心の中にある恐怖や不安を表現している。その強烈な感情表現は、後の画家達にも大きな影響を与えたと言えるだろう。



 ムンクの周囲には「死と病」の影が絶えずつきまとっていた。その恐怖に怯えながら育った彼は、いつしか結核と精神衰弱の家系に生まれた自分は、独身を通した方が良いと考えていたようだ。
 自らの運命に怯える彼に、もうひとつの恐怖が加わった。それは、トゥッラという女性との関係だ。裕福な家庭に育ったトゥッラは、金にものを言わせ、ムンクを意のままに操ろうとした。ムンクは嫌気がさし彼女を避けるようになつた。しかし、トゥッラは執拗にムンクを追い回し、ストーカーにまでなった。
 ある日、ツゥッラは自殺をほのめかしピストルを手に取る。止めようとしたムンクとツゥッラはもみ合いになり、暴発したピストルでムンクは中指を失うことになる。

「ムンクとツゥッラ」
 「生命のダンス」はツゥッラと交際中の作品で、ムンクに恐怖を植え付けたのと同時に、制作活動にインスピレーションを与えたと言ってもいい。
 作品中央は、ムンクと昔の恋人、左の女性はツゥッラ、右の女性も年老いたツゥッラだと言われている。やがて起きる二人の悲劇を予期した作品だ…。

 ちなみに、赤い女性は「情熱」を、左のツゥッラは「無垢」を、右のツゥッラは「内なる影」を暗示しているそうだ。

2018年1月24日水曜日

フェリシアン・ロップス

 Félicien Ropsは、ベルギーの耽美主義の画家で、エッチングやアクアチント技法の版画家である。ロップスは油絵よりもスケッチが得意で、最初戯画絵師として名声を得た。その後、晩年のボードレールと出会い、ロップスは一生忘れることのできないほど強烈な印象を受けたという。ロップスはボードレールの『漂着物』の口絵を描いた。この本は、フランスの検閲で削除された『悪の華』の詩を集めたもので、当然ながら、ベルギーで出版された。
 ボードレール、ならびに、ボードレールが表現した芸術と関わることで、様々な作家たちからの賞賛を得た。ロップスは象徴主義・デカダン派の文学運動と関係を持ち、そうした作家たちの詩集にイラストを描いた。詩の内容同様に、ロップスの作品も、セックス、死、悪魔のイメージが混在する傾向が強かった。
晩年、ロップスの視力は衰えたが、死ぬまで文学との関わりは持ち続けた。